「おはようございます」の謎 1

なぜ、昼でも夜でも「おはようございます」と挨拶するのか

出勤時間が固定されていない仕事では、お昼だろうと夜だろうと、その日初めて会った人には「おはようございます」と言う。 挨拶するなら「こんばんは」でも「こんにちは」でもいいわけで、逆に「おはよう」が使える時間帯は短い。
NHK放送文化研究所の調査によると(テレビ出演者が挨拶する場合)午前9時に「おはようございます」と挨拶してよいと答えた人は全体の90%に上ったが、これが午前10時となると全体の64%に下がる。

 

始業時間が午前8時30分だとすると挨拶言葉として「おはよう」が使えるのは30分前後ということになる。もちろん9時を1分でも過ぎたら、「おはよう」を使ってはいけないというようなものではないので、そこは臨機応変に9時半だろうと10時だろうと先様が「おはようございます」とおっしゃれば、こちらも「おはようございます」と返す。しかし、11時30分だったらどうだろう?さすがに「おはようございます」とは返せない。11時30分ならまだいい。こちらも胸を張って「こんにちは」と言える。しかし、10時45分くらいに目の前のエレベーターの扉が開いて、そこから取引先の常務が降りてこられたら?さぁ、何て挨拶する?!

 

この悩ましい挨拶「おはよう」に比べて「こんにちは」は、かなり守備範囲が広い。
11時過ぎから日が暮れるまでの間、つまり冬なら午後5時過ぎまで、夏場なら午後7時近くまで「こんにちは」で通せる。
考えてみれば「こんばんは」だってそうだ。下手をすると日を跨いで使える。
深夜12時を過ぎてもやはり挨拶は「こんばんは」だ。

 

たとえばもし「おはよう」という挨拶がなかったとしたら、「こんにちは」と「こんばんは」は、屋外の明るさで判断すればいいことになる。
太陽が昇り、外が明るくなれば「こんにちは」と挨拶する。
今度は太陽が沈み外が暗くなると「こんばんは」と挨拶する。
うん、これは簡単だ。

しかし、そうはならなかった。
時間限定で、しかも使い手にすごく気を遣わせるこの挨拶は厳然と残り、更に不思議なことにその本来の用途を超えて使われるようになる。

 

一般的にいうシフト制で勤務している(たとえば、百貨店に勤めている)場合などは、開店から夕方までの勤務を早番、夕方から閉店までの勤務を遅番などとしてシフトを組むため、従業員の就業時間が統一されていない。
つまり「はぁ、今日も1日よくがんばった。さぁ帰ってビールでも飲むか」と早番がロッカールームに戻ってきたら、出勤してきた遅番に出くわすなんてこともある。
そんなとき何と言うか。夕方、ロッカールームで出くわした二人は、こう言うのだ。
おはようございます 」おぉ、なんたること。取引先の常務に何と挨拶すべきか、あんなに悩ませた言葉が、お昼を軽く飛び越え夕方に、しかも何の迷いもなく発せられるのだ。

 

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