「おはようございます」の謎 2

 

なぜ、昼でも夜でも「おはようございます」と挨拶するのか

 

何故かと考えてみた。

まず1つに、丁寧に言えるのは「おはよう」→「○おはようございます」のみ。
「こんにちは」→「×こんにちはでございます」。「こんばんは」→「×こんばんはでございます」は言えない。
「おはようございます」は丁寧語なので、挨拶しようという気持ちと同時に相手に対する敬意も表せる。

 

そして二つ目に、家族に使えるのは「おはよう」だけであるということ。
たとえば、休日つい昼過ぎまで寝てしまって、何て言い訳しようかと頭を掻きながら妻を見た瞬間、「こんにちは」と声をかけられたとしたら、きっと妻は怒っている。 もしかすると激怒しているかもしれない。

たとえば金曜日の夜、映画館の前ですれ違った父親が自分に向かって「こんばんは」と挨拶したなら、そこには何かある。かなり怪しい。下手をすれば家庭が崩壊してしまう。
ことほどさように、家族間では「こんにちは」も「こんばんは」も言わない。
つまり、「おはよう」だけは「こんにちは」「こんばんは」とは異なり、ごくごく親しい間柄にも使えるので親しみが表れるのだ。

 

結論

このような理由から、「おはようございます」がいわゆるギョーカイ(美容業界も小売業界もギョーカイ)の挨拶語の定番となったのだとして、その根拠を示せと言われれば、聞こえないフリをするしかない。しかし、答えになるかどうかは別として、すこし考察してみることは出来る。


そもそも「おはようございます」とは何か。
お昼の挨拶「こんにちは」は、「今日(こんにち)はお日柄もよく…」などの後半部分が省略された形。
夜の挨拶「こんばんは」も「今晩(こんばん)は、月がきれいで…」などの後半部分が省略されている。
なのに何故、朝の挨拶は「今朝(こんちょう)は」ではなく「おはよう」なのか。

 

それは、そもそもの言葉の成り立ちが異なるからだ。
「こんにちは」や「こんばんは」が、現在の風景や情景を説明するための取っ掛かりとして発せられるのに対して、「おはよう」は、相手を労うために発せられる 言葉だ。
つまり「おはようございます」は「おはやく」がウ音便化して、尊敬語の『ございます』が付いたもので、そもそもが相手を慮って発せられる言葉なのだ。

 

人に向かって発せられる言葉だからこそ尊敬の形を作る必要があった。
そして、あなた様「おはやくございますね」が原型だということを踏まえて考えると、『朝』以外の挨拶に(お昼や夕方、夜の挨拶として)「おはようございます」を使う理由も理解できる。
つまり、出勤したばかりの人に『あなた、お早いですね』と言っているのだから、「おはようございます」という挨拶は、当を得ているのだ。

 

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